書評

[Book Review]「図を多用することで、サッカーの試合をより深くみる”戦術分析”について分かりやすく解説した良書」アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます / らいかーると

[Book Review]「図を多用することで、サッカーの試合をより深くみる”戦術分析”について分かりやすく解説した良書」アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます / らいかーると 書評

 ここ数年、サッカー分析系のYoutubeチャネルが増えてきていて、Youtubeのおすすめにも良く登場するようになりました。個人的にも、自分が観戦していた試合について、気づかなかった”深い”ポイントも解説されていて「すごいなぁ」と関心しています。
 一方で、自分でもリアルタイムに試合を観戦しながら、そういう”深い”ポイントに気付ければ、よりサッカー観戦が楽しくなるはずだけど、どうすればそういう観戦ができるようになるのだろう?という漠然とした疑問がありました。本書は、そんな中で出会い、読み進めるうちに、まさに求めていた「How to」が解説されていた。実際、本書の内容に触発され、本ブログで Soccer Match Review を投稿するようにもなりました。
 そんな本書の内容を自分が「刺さった」部分をかいつまんで紹介したいと思います。

フォーメーションの図が多く掲載

[ads]

本書は新書であるにも関わらず、フォーメーションの図が多用されています。見開きの片側1ページがちょうど縦視線のサッカーピッチとなり、本文での解説を補足するかたちになっていますが、これがとてもわかり易いです。時間がないかたは、この図だけをパラパラと読むだけでも価値はあると思います。

試合分析のフレームワーク

[ads]

「選手の配置図」の把握方法など、試合分析のフレームワークとして紹介されている「7項目」は、私自身とても参考になりました。この「選手の配置図」について理解すると、中継で紹介される「このチームはこのフォーメーション」と1つのフォーメーションだけで語ることにあまり意味がないな、と感じるようになりました。そういう気持ちで実況アナウンサーと解説者との「フォーメーションはXXですか?」というやりとりを、解説者がいかにさばくか、という変な注目ポイントができるようなりました。「そう見えますね」と軽く受け流す方もいれば、「守備時はXXXがXXXに移動して、攻撃時はXXXがXXXのかたちです」ときっちり解説する方もいて、それはそれで面白いなと思うようになりました。

最新戦術についての言語化

[ads]

第3章で説明されていますが、最近よく見るようになった、「ビルドアップ時に、ボランチが最終ラインに降りてきて、CBとビルドアップする」ことを、”サリーダ・ラポールピアーナ”と呼ぶことが紹介されています。私自身この単語は本書で知りましたし、一度知ってしまうと、「あ、”サリーダ”のかたちだ」と自分自身の思考としても簡潔になるので、こういった知識を得られるのも本書の良い点です。

実際の試合での分析

[ads]

第6章には、2019年のアジアカップでの日本代表vsカタール代表の一戦を例に詳細に解説・分析されています。特に日本の失点シーンはAFCの公式YouTubeにて動画も公開されているので、合わせてみると「なるほど」となり、より楽しめます。

まとめ

[ads]

「サッカー戦術分析」というと、得てして難しい用語を多用したり、(外国籍著者による著書などは特に)小難しい言葉で語られがちですが、本書は平易な文章と図が多用されていることも相まって、大変読み進めやすい良書です。本書の内容を少しでも憶えておけば、「日本代表の試合だけは観る」ようなライト層向けに、簡単な解説もできるようになるはずです。個人的には、日本代表がW杯でより上の結果を残すためには、ヨーロッパや南米のように、ファン・サポーターがサッカー戦術についてより理解を深めることも重要と考えているので、このような書籍を多くの方が手にとってもらえることを願っています。

関連情報

著者:らいかーると さんのブログ
https://building-up.com/

Ads