2022年カタールW杯アジア二次予選の連戦のさなかに開催されたセルビア代表との親善マッチ。両チームとも状況は以下のように異なるものの、「2021年9月から始まる、2022年カタールW杯最終予選に向けた準備」という位置づけは似ています。コロナ対策での来日ということもあり、セルビアのコンディションがそこまで高くない印象でしたが、それでもW杯出場経験のあるヨーロッパのチームらしく、個々数試合の中でも苦戦した試合といえそうです。いくつかのポイントと共に試合を振り返ってみます。
- 日本代表
- すでに2次予選を決めている
- オリンピック代表に有力選手を割いている
- セルビア代表
- 2020年11月にEuro2020(2021年6月開催)の予選敗退となった
- Euro2020予選でのチーム得点王(ミリンコビッチサビッチ)は帯同していない
Lineup
日本は前戦からメンバーを大幅に入れ替えるも、古橋、南野は引き続きスタメンに名を連ねます。このあたり、少なくとも攻撃陣としてはこの2人を中心としたチーム作りを模索している様子が伺えます。フォーメーションもおなじみの4-2-3-1です。
前の試合でボランチで途中出場した谷口はセンターバックでスタメン出場となりました。このあたり、ボランチとしての働きがどのように評価されたうえでの起用なのかは気になります。いつの間にか激戦区となったボランチの面子の中では、高さに分がある谷口は、高身長ぞろいのセルビア相手などでのオプションとしてボランチ起用する形もみてみたかったところです。
前半
ボランチが最終ラインに落ちての組み立て
必ずしも定まった形でのビルドアップをしていたようではなかったのですが、ボランチの橋本が最終ラインにサリーダの形で降りてきて、両サイドバックを高い位置にもっていく形がいくつかみられました。ここは前回はセンターバック的なサイドバックの佐々木と、Theサイドバックの長友というキャラクターの違いからくる合理的な組み立てだと思います。
新たな試みのゼロトップ
大迫不在のなか、古橋をトップ起用した狙いでもある、いわゆる「ゼロトップ」の形も見えるようです。最前線の古橋は2列目の位置に下がり、3-2(守田、鎌田)-5のような形になります。
セルビアは守備時に5-3-2の形となり、奇しくもタジキスタンと同じ形になります。ゼロトップの利点でもある「アタッキングサードの有効活用」については、セルビアの最終ラインと中盤が程よい距離感を保っているため、日本はそこを活かすことができずにいます。
25分に、古橋がいい裏抜けをみせ、そこに谷口からいいフライスルーパスが通ります。森保監督からも「ブラボー」が飛びますが、シュートまでは持っていくことができません。
日本が5バックを苦手としているというスカウティングがあるのか不明ですが、いずれにせよ5バック対策は1つの課題になりそうです。
狙われる日本の両サイド
日本に押し込まれる時間帯が続くセルビアですが、攻撃時には高さを活かすコンセプトを見せます。中盤の両サイドハーフが徐々に高い位置を取り始め、両ウィングと共に、日本のサイドバックを混乱させようとする動きを見せます。
前半まとめ
日本はPA付近まではボールを運べますが、フィニッシュの形が見えてきません。センタリングを上げても、高さで勝てる気もしないし、低いクロスを狙おうにも、5バックに加え、ディフェンスの足も長いので引っかかる、というかっこう。少し遠目から狙っても良さそうですが、セルビアのバックラインは引きすぎず、数回あったミドルシュートもブロックされてしまい手を焼きます。
後半
日本代表 オナイウ、川辺投入
後半開始から、メンバーを交代します。今回のメンバーでは唯一の純粋なセンターフォワードといえるオナイウが結果的に流れを変えることになります。
47分のゴールシーンとなるコーナーの獲得シーンでは、オナイウがサイドに流れつつ、深さをとり溜めをつくり、室屋に預け、自身もゴール前に走り込む、というセンターフォワードらしい仕事が奏功します。前半にはなかった、相手のディフェンスラインを押し下げさせるような駆け引きが効果的でした。
更に深く守るセルビア
後半に入り、一気に運動量が落ちたセルビア。それでも、1失点でしのぎつつ、なんとかどこかで1点を返そうという姿勢からか、守備時にかなり極端に引いた布陣を敷きます。以下のように、ペナルティエリア内に8〜9人が密集しています。体格も大きい選手がそろっていることから、ここを崩すのは容易ではなさそうです。
とはいえ、セルビアもボール奪取位置が深すぎるため、これ以降効果的な攻撃をすることができなくなり、そのまま試合終了ということになりました。
まとめ
過密日程もあり、後半途中から、両チームともに運動量が落ちてしまったこともあり、前半の緊張感からすると物足りない感じで終わってしまいました。
現メンバーでは唯一の純粋なCFのオナイウの投入で流れを改善できた点は収穫だったと言えそうです。大迫選手が復帰したとしても、選手構成として、前線で体はれるタイプの選手を揃える重要性は高そうです。U24に目を向けてもそういったタイプの選手はあまりいないので、鈴木優馬選手とか、鈴木武蔵選手も含め、アジア三次予選に向けての選手選考も注目したいところです。
一方で、5バックには引き続き手を焼いている印象です。この6月の連戦の中で対策をすることは難しそうですが、コーチ・スタッフ陣が、戦術的な崩しの形を準備して9月からのアジア最終予選に望めるかが、ひとつ今後のポイントになりそうです。本戦は相手が守備を固める前に日本がリードを奪うことができましたが、相手にリードを奪われたあとに守備を固められる局面もきっと出てくると思います。