Jリーグにおいては、中々長期政権を気づけないチームが多いが、4年目を迎えたポステコグルー体制の横浜FMがチームとしての強さを、就任したてのリカルド・ロドリゲス体制の浦和に見せつけた試合。いくつかの特徴的なシーンと共に振り返る。
Lineup
■横浜FM(アンジェ ポステコグルー):4231
■浦和(リカルド・ロドリゲス):4231
前半
前線からプレスに行く横浜FM
浦和は、キーバーからのビルドアップ時に、ロングフィードを蹴らずに、DFラインからしっかり組み立てる。横浜FMはそのビルドアップに対して、4枚でプレスにいく。浦和はGKいれれば、5対4で数的優位にたてるが、横浜FMの7:エウベルが、うまくパスコースを消しながらプレスすることで、浦和の1:西川はフィードを蹴らざるをえない状況に。このシーンではフィードされたボールを中盤で横浜FMが拾うことに成功。
浦和としては、ビルドアップの起点と、中盤が若干距離が遠いようにも感じる。この後も度々、ビルドアップを狙われ、横浜FMにショートカウンターを許す場面が目立つ前半。飲水タイム明けの最初のプレーでは、一転ロングフィードを蹴るも結果的に、自陣ゴール前に押し込まれる形となり、2失点目を喫してしまう。
2得点目以降の28分ごろから、プレスをGKまでかけるのではなく、中盤(浦和18:小泉など)とし、少しプレスのラインを下げている。
浦和の541守備
浦和は、守備時に541で自陣ゴール前をしっかり固めるかたち。横浜FMもサイドを広く使いながら崩しを試みるが、インテンシティの高い序盤では守備を崩せず。
前半まとめ
リスクを負って、ハイプレスを仕掛た横浜FMに対して、浦和はそのプレスの網をかいくぐることができず、2失点。浦和は自陣深くの541の守備時においては横浜FMにチャンスを与えなかったが、一方でボール奪った際に相手ゴールまでの距離が遠いこともあり、好機をつくることができなかった。
横浜FMの前線の選手の運動量が目立つ前半といえる。
浦和は得点を奪うために、どのような工夫をしてくるのか?というところが後半の見どころ。
後半
高いラインでのプレスを継続する横浜FM
横浜FMは前半同様、後半開始早々高いラインからプレスを敢行。浦和は引き続きプレスに苦しむ展開。
442で攻撃の形を変更する浦和
後半メンバを交代し、442で攻める形に変更した浦和。ボールロスト時のハイプレスへの移行がスムーズになる効果も感じられる。
ハイプレスを仕掛ける浦和
浦和は後半は、引いて守るのではなく、前線高い位置からのハイプレスを敢行。しかし、最初のプレスは横浜FMにうまくかわされ、そのまま危険なシュートシーンまで許してしまった。その影響か、2回目以降のプレスはプレスに行く選手とリトリートする選手、スペースを埋めようとする選手、というように意識がずれてしまっているようにもみえた。カメラの画角で捉えていないので不明だが、下図の場面では、浦和:19金子の詰めのタイミングが遅いように写ったが、横浜FMの7:エウベルや10:マルコス・ジュニオールのポジショニングが絶妙で出ていけなかった可能性もある。
後半飲水タイム明け
両チームとも選手を交代し、下図のような布陣に。浦和は再び4231のようなかたちに戻す。浦和18:小泉がサリーダの形でCBの位置に降りてビルドアップするなどなんとか横浜FMのプレスへの対応を苦心するが、中々実を結ばない展開。
試合の分かれ目
最後まで横浜FMのハイプレスへの対策ができなかった浦和。前半に横浜FMの5:ティーラトンが負傷退場するというアクシデントも、むしろ「それでも揺るがなかった」チームコンセプトの浸透度の高さが際立った。浦和も後半、ハイプレスをしかけるシーンもあったが、ボールの追い方、タイミング、場所といったところのチームとしての意思統一がまだできていないような印象もあった。一方、横浜FMでは新加入の7:エウベルがゴールシーンにこそ直接絡まないが、オフ・ザ・ボールでのダイアゴナルランであったり、パスコースを消しながらプレスにいくところなど、はやくもチームに適用できるクオリティの高い選手であることを印象づけた。
浦和は敗戦とはなったが、特に後半はいくつか状況打開のためにチャレンジをするなど、チームとしてこれから引き出しを増やしていく局面なのだろう。