ソン・フンミンら主力を欠く韓国代表に対して、U24メンバを除けばほぼベストメンバー(レギュレーション的に招集できなかったフランスリーグでプレーする川島、長友、酒井を除く)で臨む日本代表の10年ぶりのA代表マッチは3-0と日本代表の快勝に終わった。終始日本代表のペースで進んだゲームの中でも、カタールW杯に向けたチーム作りの核となる要素が見えてきたので、整理しておきたい。
前半
日本のビルドアップ、韓国のディフェンス
日本代表のビルドアップはボランチ遠藤がで2CBの間に降りてき(サリーダし)て2CB+遠藤の3人で開始する。同時に両サイドバックが高い位置をとるが、以前のチームでみられていたような、「上がりすぎて出しどころがない」状況とはならず、韓国代表のサイドハーフとサイドバックの間の絶妙なポジションを取れていることでビルドアップがスムーズに進んでいた印象。
なお、注目していた日本右サイドの攻撃だが、先制点のシーンでは、山根のインナーラップの流れから得点していたが、川崎ではおなじみのシーンも、日本代表でインナーラップをみたのはあまり記憶にない。代表チームは複雑な戦術を導入するのは時間的にも難しいなかだが、選手それぞれが戦術を持ち込むかたちでチームの引き出しを増やしていくのは現実的な成長戦略にも思える。一方、伊東が深くえぐってクロスを上げるシーンが少なかったのが印象に残った。チームとしての方針なのか、山根とのコンビネーションの部分なのか、いずれにせよ開始直後に効果的だった縦への突破をもっとみせてもよかったようにも思える。
韓国のビルドアップ、日本のディフェンス
一方の韓国についても、ボランチのウォン ドゥジェが日本の遠藤同様、最終ラインに降りてきてビルドアップを開始する。日本は442の形でディフェンスするが、後ろ8枚が比較的低い位置でライン間を短くしガッチリブロックをつくるところからディフェンスを開始していた。このとき、機を見て日本の6遠藤が韓国の中盤(18ナム テヒや5チョン ウヨンあたり)にプレスをかけ、ボール奪取するところからのショートカウンターという形がいくつかあった。2015シーズンのプレミアリーグ:レスターのエンゴロ・カンテのようにも見えた。
※ちなみに、両チームとも、背番号が視認しづらいユニフォーム配色のためところどころ選手の配置が間違っている可能性が高い。
後半
5レーンを広く活かした日本の攻撃
後半に入っても引き続き攻勢の日本。75分ごろのシーンでは、5バックでディフェンスラインを固める韓国に対し、前線の5レーンを広く使うことで手詰まりを防いでいた。ここで攻撃のタクトを振っていたのはボランチ遠藤。このあたりの振る舞いは同じ遠藤でも遠藤保仁を感じさせる。
最終局面
運動量のおちてくる70分過ぎから、古橋、浅野というスピードスターを投入。浅野が韓国の最終ラインを押し下げ、古橋が左右のサイドからしかけるかたちがうまく回る。脇坂、江坂がうまく攻撃のバランスをとっていたのも後押ししていた。
まとめ
日本代表としては、点差以上に決定機を作っており、キム・スンギュの好セーブがなければあと2点くらい入っていても不思議ではない展開。不動の両SB(酒井、長友)不在のなか、LSBの佐々木は経験もあり安定感のあるプレーで存在感をしめし、初出場の山根はクラブでの活躍そのままに、日本代表では珍しいインナーラップの流れからのゴールをするなど、RMFの伊東と共に日本の右サイドから多くチャンスメークし、今後も代表の常連になるだろう活躍をみせた。昨年存在感をましたボランチの遠藤は、アジアレベルでは頭一つ抜けた対人の強さを見せつけ、中盤でのボール奪取からのショートカウンターや、ゲームメークにおいても、かつての遠藤保仁のようにときに縦への推進力をみせ、ときにテンポを落とすなど存在感を更に増した。クラブでの出場機会が少ない大迫については、得点こそなかったが質の高いポストプレーはやはりこのチームの顔といえる。
一方の韓国代表は2CB+GKによるビルドアップから攻撃をスタートするも、アタッキングサードから先をどう崩すのかに手を焼いていた印象。ソン・フンミンという絶対的エースやファン・ウィジョといった実績ある選手が不在のチームは苦しい戦いとなった。唯一キム・スンギュは後半から登場し、数多くスーパーセーブみせるなど、監督に大きくアピールできたのではと思う。