優勝戦線に残るための大事な一戦も、無観客。両チームの顔とも言えるセルヒオ・ラモス、ジェラール・ピケが不在。雨のコンディション。練習場のようなアルフレッド・デ・ステファノでの開催。と絵面としては寂しい感じになってしまった一戦。それでも、両チームの監督が持ちうる戦力を十分に活用する戦術をとったとてもおもしろい試合といえ、見ごたえのある一戦となった。
Official Match URL:
https://www.laliga.com/en-GB/match/temporada-2020-2021-laliga-santander-real-madrid-fc-barcelona-30
前半:バルセロナのビルドアップ
バルセロナの狙い=左サイドのアルバを中心としたサイド攻撃
FCBのビルドアップは中央からWBにボールが流れていく。図のシーンのように、特に左サイドのジョルディ・アルバを活かした攻撃をしかけようとする狙い。
レアル・マドリーの狙い=1トップ以外で引いて守りを固める
RMAはFCBの3バックの中央をベンゼマがケアするが、脇のCBは離していることで、より自陣ゴールに近いところへ人を割くフォーメーション。ポジション的にRWGであるバルベルデが攻撃参加してくるジョルディ・アルバにしっかりマークにつく。
両チームの思惑
FCBとしては、サイド攻撃を仕掛けようとするが、引いて守るRMAの守備が固く、ゴール前に攻め込むことができない。RMAの前線のプレスがないため、CB(ラングレ、ミングエーサ)が「浮く」形になるため、CBが攻撃に参加することで活路が見いだせそうに見える。前半の13分という早い時間帯に失点してしまったこともあり、より前がかりにいく必要がでてくる。
RMAは、引いて守りながら、相手陣内にスペースを作り出す。ラモス、ヴァラン不在のなかリスクはあるが、その心理を逆手にとって、ヴィニシウスのロングカウンターを狙っていたように思える。FCBの攻撃はジョルディ・アルバのサイドが中心だったこともあり、その逆サイドのヴィニシウスはそこまで守備に追われることはなく、ポジティブトランジッション時に一気にFCBゴール前に迫るシーンを作り出すことに成功。
なお、前半のうちに、RMAのビルドアップの形をみようと思ったが、後ろからビルドアップする形はほぼなかった。
後半:バルセロナのシステム変更
グリーズマンを投入し、3トップに
メッシ、デンベレの2トップだった前半。CBのラングレがオーバーラップして攻撃を下支えするが、クーマン監督は物足りなかったという判断か、攻撃が本職であるグリーズマンを投入し、LWGの位置に配置。下の図はその形が奏功した48分
CF入ったメッシが、二列目のペドリと前後で適宜ポジションチェンジするかたち。サイド攻撃一辺倒ではなく、時折中央の狭いスペースを使って攻め込むFCB。
なお、後半から、かなり雨が激しくなってきているが、結局試合終了までそれによるプレーの質の低下がなかった点は、さすがと言える。
レアル・マドリーのビルドアップ=メンディのアンダーラップ
カウンターが多かったRMAだが、55分にはビルドアップする形をみることができた。縦への推進力があるメンディがアンダーラップしつつ、ヴィニシウスとのワンツーで左のワイドレーンを攻略しようとする。この場面ではFCBのディフェンスにカットされてしまうが、少ない人数で攻め、かつFCBの前線でチャンスメークしていたデンベレを下げさせることに成功している。
少ない人数で攻めるRMA55min
右サイドの攻撃を強化したバルセロナ
前半攻撃参加していた印象の薄い、FCBの右サイドが50分過ぎから目立つようになる。下図は得点シーンだが、FCBのRSBミングエーサがデンベレに叩いた後、中央に詰め、逆サイドに流れたボールの折返しのクロスをゴールに決める。RMAのヴィニシウスのカウンターへの対応策として、クーマン監督が「同サイドを押し込む」という回答を出したように思える。
5131の形で守るレアル・マドリー、メッシにゲームメイクさせるバルセロナ
72分に3人の選手を同時投入し、システムを変更するRMA。一方メッシを低い位置でボールを持たせ、パスの供給役であったり、低い位置からのドリブルをしかけることでRMAの守備のバランスを崩すかたちをつくるFCB。
5131のレアル・マドリー
メッシを下げてゲームメイクさせ、途中出場のモリバが2列めから飛び出しメッシからのクロスをシュートしたシーン。グリーズマンやセルジ・ロベルトが幅広にポジショニングすることで、中央にスペースを開けようとしているような狙いもあるかもしれない。
ゲームメーカー:メッシが決定機を演出
まとめ
試合終了間際に立て続けにイエローをもらい、カゼミロが退場するも、そのままレアル・マドリーが勝利
「銀河系」を謳っていたころに比べると、メジャーな選手が少なかった印象の本戦。とはいえ、RMAでいえば、ヴィニシウスのスピード、バルベルデの上下動、FCBでいえば、ミングエーサの攻撃参加、モリバの飛び出し、といった若手の持ち味を両監督がうまく引き出し、それに合わせた戦術を駆使していたように思え、見ごたえのある試合だった。ラ・リーガはまだまだ優勝争いも白熱しているため、シーズン終盤に向けて、若手の成長・台頭含め、楽しみになってきた。